ある地域での大気の揺らぎは、大気循環の変化を通じて遠く離れたところに伝わります。これは「テレコネクション (遠隔影響)」と呼ばれ、気候システムの自然変動を理解し予測する上で重要な意味を持ちます。テレコネクションには同じような空間構造・地理分布を持って頻繁に、強い振幅で現れるものがいくつか知られており、テレコネクションパターンと呼ばれています。いくつかの代表的なテレコネクションパターンに対しては、その形成メカニズムについて数多くの研究がなされてきましたが、まだ多くのテレコネクションパターンについては、そのメカニズムが十分に理解できたとは言えません。まだ発見されていないテレコネクションもあるでしょう。
テレコネクションは通常、気圧や風など大気循環の揺らぎとして同定されます。その励起には、大気と海洋との間の相互作用を伴ったフィードバック過程が関わっていることがよくあります。さらに、テレコネクションは離れた地域で新たなフィードバックを引き起こし、ときには異常気象と呼ばれるような極端な気象をもたらします。大規模なテレコネクションは、異常気象のグローバルな連鎖を引き起こすこともあります。
またテレコネクションパターンの発現の鍵は海洋にあることもあります。海洋の揺らぎは大気に比べてゆっくりと時間発展し、数ヶ月から、ときには数十年に渡って、世界中の様々な地域の 気候に影響します。海洋変動とそれがもたらすテレコネクションは、数ヶ月先の天候予測を可能にすることもあります。
このような気候の自然変動は、人為起源の地球温暖化と干渉 し、ときには更に激しい熱波をもたらす一方で、温暖化と逆行するかのような一時的な寒冷化を引き起こすこともあります。観測され た気候の揺らぎの中から人為起源の変化と自然変動とを分離する「原因特定」は、エネルギー・気候政策の決定において重要な意味を持ちますが、自然変動の深い理解と大型計算機による多様な気候 シミュレーションを必要とする高度な試みです。
私たちの研究室では、観測データ及び気候モデルシミュレーションデータの解析や、新たなモデルシミュレーションのデザインと実施を通して、気候システムのグローバルな共変動の理解と、それに基づく予測可能性の特定を目指しています。