このサイトで示しているコンテンツは、再解析データと呼ばれる気象データで作成されています。地球全体の大気の状態を3次元のメッシュでの値として表現しています。過去から現在まで、たとえば、1964年の10月10日午前9時(日本時間)の天気図でも切り出すことができます。そのようなデータはどのようにして作られているのでしょう?

いまでは、人工衛星が地球全体を観測していますが、1970年代以前では観測データは人が住んでいる陸域に限られ、海域では船舶による限られた場所・時刻での観測しかありません。また人工衛星といえども、例えば海の上の気圧など、観測できない情報もあります。にも関わらず、私たちは衛星観測が始まるよりずっと前の、例えば1950年代の日々の大気の様子を把握することができます。

これを可能にするのが再解析データと呼ばれるものです。

再解析データとは、日々の天気予報に利用している最新の数値予報システムと過去の観測データを活用して、過去の大気の状況(気圧、風、気温、湿度、日照、降水等)を空間3次元+時間の4次元データとして再現したものです。

数値天気予報と客観解析

みなさんが目にする天気予報は、スーパーコンピューターによる数値シミュレーションに基づいています。これには、大気の様々な物理法則をコンピューター上でシミュレートする気象予報モデルが使われています。このモデルでは、現在の大気の状態をもとに、そこから各メッシュでの気温や風などの変化を時々刻々とコンピュータで計算し、未来の大気の状態を予測します。

一方、上で述べたように、観測データは地球全体をくまなく覆ってはいませんし、観測できる情報 (物理量) も限られています。特に、人が住んでいる陸上では比較的豊富な観測データが得られますが、海上では観測データが限られています。雨を降らせる水蒸気は海の上から運ばれてきますし、大気はたとえば偏西風のように地球全体を流れていますから、海の上の情報は天気予報のためにとても重要です。

そこで、観測データと気象予報モデルを組み合わせたのが客観解析データと呼ばれるデータです。観測データが不足するところであっても、私たちには予測データがあります。予測はもちろん完璧ではありませんが、予測開始からすぐ、例えば6時間ほどなら、現実とはそれほど大きく外れていないはずです。そこで、観測データと予測データを融合して、観測データと気象予報との間で最も矛盾がないような大気状態を推定するのです。

天気予報は19世紀に始まり、世界の気象観測データを電報で収集してプロットして天気図を書き、そこから高気圧、低気圧の移動を推定することで天気を予報していました。今は、衛星データも含めて世界の気象観測データを収集し、これらのデータと気象予報モデルを使って客観解析を行い、それを初期条件としてスーパーコンピュータで予測計算を行い、それをもとに天気予報や台風の予報などを発表して防災にも役立てているのです。

客観解析から再解析へ

一方、このような客観解析データの蓄積によって、私たちは過去の大気を把握し、気象の理解とさらなる予報の改善のための研究に用いることができます。しかし、上で述べたように、客観解析データは気象予報モデルに依存しています。大気の物理法則をよりよく表現できる予報モデルを用いた客観解析は、現実のより良い推定値になっているはずです。

予報モデルは、予報の改善のために改良が施され、アップデートされていきます。ということは、過去の客観解析データは、現在のものに比べて品質が低いということになります。

そこで、最新の気象予報モデルを用いて、過去の観測データを使って過去の客観解析データを作り直したものが、再解析データなのです。

再解析データは世界のいくつかの気象機関で作成されています。日本の気象庁から公開されている最新の再解析データはJRA-55と呼ばれ、1958年から現在までをカバーしています。また米国や欧州では、気圧の観測データのみを用いて、20世紀初めあるいは19世紀半ばまで遡る再解析データも存在します (観測データが限られるので、信頼度も下がりますが)。これらは地球全体の大気の再解析であり、予報や解析する対象が地球全体ということもあり、計算するメッシュの大きさは数10km四方以上となります。

複雑な海岸線に囲まれ、細かな地形をもつ日本では、この細やかな国土に影響される気象の地域的な特性があります。このような特性をきちんと表現するためには、より細かなメッシュで再解析を実施する必要があります。このため、当グループでは、日本周辺域に領域を限定し、高い空間分解能(5km程度)の再解析データを作成するプロジェクトを開始しました。